臨店とは:売上低下の原因を「店」と「立地」に切り分ける店舗訪問
— チェックリストを埋めて帰る臨店では、店の外で起きている変化を見落とす
多店舗の飲食チェーンでは、本部の担当者が店に出向くことを「臨店(りんてん)」と呼びます。スーパーバイザーやエリアマネージャーが担当店を回り、店の状態を確かめ、店長と話して帰る。どの会社でも当たり前に行われている業務です。
ただ、実際の臨店を見ていると、チェックリストを埋めて帰る日になっていることが少なくありません。床は汚れていないか、身だしなみは整っているか、提供時間は守られているか。それ自体は大事ですが、それだけでは臨店のいちばん重要な役割が抜け落ちます。
臨店とは:本部が店に足を運び、現場で確かめること
臨店は、数字やレポートでは分からないことを、店に行って自分の目で確かめる業務です。似た言葉に「巡回」がありますが、巡回が担当店を順番に回ること全般を指すのに対し、臨店は店に入り込んで状況を確認し、店長と改善を決める場面を指して使われることが多い言葉です。
誰が、どのくらいの頻度で行くかは会社によって違います。担当店舗の数、店の成熟度、業績の状態で変わるので、決まった正解はありません。共通しているのは、本部と店の間に立って、数字の裏にある理由を現場で特定するのが役割だということです。
臨店で見るのは、店の中だけではない
一般的な臨店のチェック項目は、QSC(品質・サービス・清潔さ)が中心です。料理の出来、接客、清掃、在庫、シフトの組み方。どれも店の中の話です。
ところが、売上が落ちている店に臨店したとき、原因が店の中にあるとは限りません。
- 近くに同業態の競合が開店した
- 駅の改札や出口の工事で、人の流れが変わった
- 隣のテナントが閉店し、通りに人が来なくなった
- 周辺の再開発で、昼間の人口が入れ替わった
こうした変化は、店の中をどれだけ丁寧に点検しても見つかりません。店の外で起きているからです。
売上が落ちた原因を「店」と「立地」に切り分ける
臨店でいちばん大事なのは、数字が落ちた原因を二つに分けることだと考えています。
店の問題:提供の遅れ、接客の質、欠品、清掃、人員配置。店長と一緒に直せるもの。
立地の問題:競合の出店、人の流れの変化、周辺環境の変化。店長がどれだけ努力しても直らないもの。
この切り分けをしないまま臨店を続けると、立地の問題で落ちている店の店長を、運営の問題として責め続けることになります。店長は改善しようとしますが、原因が外にあるので数字は戻りません。やがて店長が疲弊して辞め、本当に店の問題まで生まれてしまう。原因の取り違えは、問題を一つ増やします。
逆に、店の問題を立地のせいにするケースもあります。「この場所は厳しいから」という説明で、運営の改善余地が見過ごされる。どちらに転んでも、切り分けを曖昧にしたことが原因です。悪さの種類を分けて考える方法は立地の悪い飲食店の集客でも整理しています。
店に入る前に、店の外を歩く
切り分けのために、臨店の手順に一つ足してほしいことがあります。店に入る前に、周辺を歩く時間を取ることです。
最寄り駅から店まで、お客様と同じ道を歩きます。その途中で見るのは次のようなことです。
- 前回の臨店から、新しく開いた店・閉まった店はないか
- 同業態や価格帯の近い競合が増えていないか
- 看板は遠くから見えるか。工事の囲いや新しい建物で隠れていないか
- 臨店した時間帯に、どんな人がどちらへ歩いているか
見る項目の全体像は立地商圏10の要素にまとめてあります。毎回すべてを見る必要はありませんが、前回との違いに気づけるよう、同じ道を歩き続けることに意味があります。
臨店は、出店計画を照合する場でもある
出店するとき、計画書には商圏や通行量の前提を書いたはずです。臨店は、その前提が今も成り立っているかを確かめる機会でもあります。
出店計画の作り方で、計画書は開店後に予測と実績を照合するために書くものだと書きました。予測より売上が低い店に臨店したら、計画書を持って行き、前提のどこが現実と違うのかを現場で確かめる。ここで分かった読み違えは、次の物件の出店判断の精度に直結します。臨店で集めた情報は、店の改善だけでなく、会社の出店基準を更新する材料になります。
開店直後は、臨店の頻度を上げる
開店してしばらくは、売上もオペレーションも安定しません。この時期の臨店は、間隔を詰めて行う価値があります。
開店直後の数字は、立地の実力ではなく、立ち上げの出来に大きく左右されます。オペレーションが固まる前の数字で立地を判断すると、見誤ります。新規出店直後の店舗運営で書いた最初の90日は、店の問題を先に潰し、立地の実力が数字に出る状態をつくる期間だと考えてください。
臨店を「監査」にしない
最後に、臨店の進め方について一つ。
臨店が指摘を並べる場になると、店長は身構えます。本部が来る日だけ店を整え、問題を見せないようにする。そうなると、臨店で本当の状態が見えなくなります。
うまくいっている臨店には共通点があります。
- 数字を店長と一緒に見て、原因を一緒に考える
- 指摘は多く並べず、次回までにやることを一つか二つに絞る
- 店の外で見たことを店長に伝え、店長が気づいている変化も聞く
店長は毎日その場所にいます。周辺の変化にいちばん早く気づくのは、本部ではなく店長です。臨店は、その情報を本部に引き上げる窓口でもあります。
まとめ
- 臨店は、本部が店に足を運び、数字の裏にある理由を現場で確かめる業務
- QSCのチェックだけでは、店の外で起きている変化は見つからない
- 売上が落ちた原因を「店の問題」と「立地の問題」に切り分ける。取り違えると問題が一つ増える
- 店に入る前に周辺を歩き、前回との違いを見る
- 臨店は出店計画の前提を照合する場。読み違えは次の出店基準に返す
- 開店直後は頻度を上げ、店の問題を先に潰す
- 監査にしない。店長が持っている現場の情報を引き上げる
臨店は店を点検する日ではなく、その店がなぜ今の数字なのかを確かめる日です。店の中と外の両方を見ることで、直すべきものと、直らないものが分かれて見えてきます。
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